ジャズブルースはその名の通りジャズの知識や奏法が必要とされるブルースなので、ブルースを練習するピアニストにとって一つのハードルになっています。
また同じようにジャズを練習するピアニストにとってもブルースのフィーリングが必要なジャズブルースは、ジャズのフレーズだけでは攻略できない課題の一つです。
そんなジャズとブルースの融合したサウンドに挑戦するのに僕がオススメするのが、ナタリー・コールが歌う『Route66』なんです。
ジャズブルースとは
ブルース進行と呼ばれるブルース特有の12小節のコード進行に、「Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ」や「セカンダリードミナント」、「パッシングディミニッシュ」などのジャズ的解釈を加えて変化させたのがジャズブルース進行です。
詳しく理論が知りたい方はご連絡いただければレッスンいたします。
基本的にはブルースなのでブルージーなアプローチがはまるのですが、ジャズの知識が使われている部分に関してはジャズのアプローチができた方がよりそれらしくなるんですよね。
ナタリー・コールの『Route66』
ナタリー・コールは偉大なジャズミュージシャンでありボーカリストであるナット・キング・コールを父親に持つ、グラミー賞最優秀R&B女性ボーカル賞も受賞する素晴らしいボーカリスト。
そんな彼女が1991年にリリースした父ナット・キング・コールのトリビュートアルバム『Unforgettable』に収録されたのが『Route66』なんです。
それではまず楽譜とともに楽曲を聴いてみましょう。
ナタリー・コールver.の『Route66』にはブルースやジャズで定番のコード・ボイシングやオブリガードのフレーズが詰め込まれています。
なのでこの曲の演奏をマスターすればすぐにでも使えるテクニックを手に入れられるんですよね。
では早速ピックアップフレーズや重要なボイシングを解説していきましょう!
『Route66』を考察!
コード・ボイシング編
「F7」と「Bb7」
1コーラス目(0:27~)
イントロ後、1コーラス目の冒頭から超重要なコード・ボイシングが使用されていて、「F7」に対してコードの3度と7度である「ラとミb」を押さえています。
これはコードの構成音から最も重要な2音を選んだ結果で、左手でコードを押さえる際の最小限のボイシングなんですよね。
なぜ3度と7度の2音なのかについては、別に記事を書きたいと思います。
2つ目のコードである「Bb7」では3度と7度の「レとラb」を入れ替えて、「ラbとレ」の順番でボイシングしています。
これにより「F7」の「ラとミb」から2音ともを半音下げたボイシングになり、演奏が楽に行えるように工夫されているんですよね。

そして左手で「ラとミb」を押さえながら、右手ではオクターブで「ファ」を演奏しています。
これはジャズブルースのバッキングでよく使用されるアプローチで、2コーラス目以降も度々出てくるので覚えておきましょう。

2コーラス目
先ほどの1コーラス目で出てきたボイシングにテンションを1音加えた押さえ方です。
7thコードにテンションを加える場合9thなら「3-7-9」の順番、13thなら「7-3-13」の順番で押さえるのが一般的です。
2コーラス目冒頭では「F7」に9thである「ソ」を加えて、次の「Bb7」では13thである「ソ」を加えています。

このようにⅠ度からⅣ度に進行する場合Ⅰ7の9thとⅣ7の13thは同じ音になるため、演奏上も好都合なんですよね。
「Am7(b5)」と「D7」
8小節目にある「Am7(b5)」と「D7」は9小節目の「G7」に向かうセカンダリーⅡ-Ⅴですが、どのコーラスを取ってみても「D7」のみで解釈したボイシングになっています。
多くは#9thを加えた「3-7-#9」というボイシングになっていて、3コーラス目の8小節目ではb13thを使用して「7-3-b13」と押さえています。

「G7」と「C7」
本来ジャズブルースの9、10小節目は「Gm7」「C7」のⅡ-Ⅴを使用することが一般的ですが、ナタリー・コールver.の『Route66』では「Gm7」の代わりに「G7」を使用しています。
この「G7」は「C7」に対するセカンダリードミナントに当たり、Ⅱ-Ⅴとは一味違ったサウンドなんですよね。
もっぱら「G7」には13thを「C7」には9thを加えていますが、2コーラス目や最終コーラスでは「C7」に13thやb13thを加えたボイシングも使用しています。

「Gm7」「C7」なら下記のようなボイシングがオススメです。

「Gb7」
ピアノソロの3小節目から4小節目にかけては、「F7」に向かうドミナントモーションの裏コードである「Gb7」が演奏されています。
ピアノに限らずギターでもよく使用されるアプローチで、小難しいことは考えず半音上から同じボイシングでスライドさせて使いましょう。

4度堆積コード(4thコード)
ピアノソロの11、12小節では完全4度で構成されたボイシングが使用されています。
「D7」と「C7」に対しては「7、#9、b13、b9」で押さえ、「G7」に対しては「3、13、9、5」の順番でボイシングしています。

オブリガード・フレーズ編
ピアノ独特のスライドフレーズ
ピアノの黒鍵から白鍵に向かって指をスライドさせる奏法を使ったフレーズで、ブルースに限らずジャズ、ファンクなどでもよく耳にします。
「C」や「F」、「G」や「Bb」など、ブルーノートが黒鍵になるキイで大活躍のフレーズなんですよね。

ブルーノートスケール・フレーズ
メジャースケールにブルーノートである「b3、b5、b7」の3音を加えたのがブルーノートスケールです。
1コーラス目の7、8小節では「b3」と「♮3」、ブルーノートである「b5」を駆使したフレーズ、4コーラス目の10小節では「b7」から「♮7」を通過してルートへたどり着くアプローチが使用されています。

16分音符フレーズ
ブルースのシャッフルやジャズのスウィングなど3連符を基本とするビートの上で16分音符を演奏すると、「ローリング」と呼ばれる独特のサウンドが生まれます。
ピアノソロの7小節目ではそれを利用したフレーズが演奏されているんですよね。
また『Route66』では使用されていませんが、下記のようなアプローチも有効です。

まとめ
いかがでしたか?
ナタリー・コールver.の『Route66』にはジャズブルースらしさを詰め込んだような、即戦力のフレーズやバッキングが数えきれないほど演奏されています。
ぜひ完コピして自身のプレイに生かしてください!
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