Sing Like Talkingの『Spirit Of Love』や平井堅さんの『Love Love Love』、AIさんの『Story』などを聴いたことがありますか?
これらの楽曲に共通するのが、ピアノの演奏にゴスペルピアノのフィーリングが感じられることなんです。
この記事ではゴスペルピアノのテクニックを生かして、ポップスの楽曲やオリジナル曲をよりダイナミックに伴奏する方法を紹介します。
15年以上に渡って関西のゴスペルシーンでピアノ・キーボードを演奏してきた僕の知識やテクニックを惜しみなくお伝えするので、ぜひ最後まで読んでみてください!
もくじ
一般的な歌伴奏とは
一般的な歌伴奏は下記のような4分音符を利用した演奏か、アルペジオを使用した演奏がオーソドックスなアプローチではないでしょうか。
もちろんそれでも最低限の伴奏にはなりますが、よりダイナミックで豪華なピアノ伴奏をしたいならゴスペルピアノを取り入れるのがオススメです。
ゴスペル
ゴスペルとは
ゴスペルとは「ゴッドスペル(福音)」を意味するキリスト教の宗教音楽で、アメリカへ奴隷として連れてこられたアフリカの人々が神様を讃美するために歌い始めたのが発祥とされています。
クワイア形式のゴスペルでは数人から大人数の人々からなる聖歌隊によるダイナミックな歌声が特徴なんですよね。
神様を讃美するのが目的の音楽なので、ゴスペルは音楽ジャンルでありません。
ロックでもファンクでもサンバでも、アップテンポでもバラードでも神様を讃美する歌詞ならゴスペルなのです。
ゴスペルピアノ
ダイナミックな歌声で観客を魅了するクワイアを支えるピアノは、パワフルかつ繊細な伴奏を求められます。
ブラックミュージックのリズムを生かしたグルーヴィな演奏と、ジャズ理論を濃縮させたような独特のハーモニーが唯一無二のサウンドを作り出しているんですよね。
今回はピアノ一本でポップスのバラードを演奏する際に、よりサウンドをきらびやかにしてくれるゴスペルピアノのプレイスタイルをご紹介します。
ゴスペルピアノを生かして
コードサウンド
ゴスペルにはadd9を含んだサウンドがよく似合います。
特にⅠ度やⅣ度(Key=CならCとFのコード)などのメジャーコードに付け加えられ、バラードからアップテンポまで曲調にかかわらず使用できます。
ゴスペルの名曲である『Total Praise』のイントロではKeyのⅠ度であるDb add9が演奏されています。
詳しくはこちらの記事でも紹介しているので、よければ読んでみてください。
16分音符一つ分をフライングする演奏法
ゴスペルのバラードはたとえゆったりとしたテンポでも、16ビートのグルーヴが常に背景にあります。
特に1拍目や3拍目の強拍に向かって16分音符をひっかけてプレイすることが多いです。
上記の例のようにひっかける16分音符は単音でもいいですし、強拍で演奏するコードの周辺コードでも構いません。
ヘゼカイア・ウォーカーさんの名バラード『I Need You To Survive』では、クワイアとピアノによる最初のAメロで度々ピアニストが引っかけて演奏しています。
またこの楽曲のようにテンポが極端に遅かったり、BPM90くらいのミドルテンポに近いような楽曲では8分音符のニュアンスで引っかけた方が雰囲気にあう場合もあります。
sus4を生かしたフレーズ
ポップスの楽曲でもお馴染みのⅠ度メジャーからsus4へ向かい、再びⅠ度メジャーへ落ち着く進行で使用されるゴスペルならではのアプローチを紹介します。
Csus4のコードをF/Cに変更しトップノートと内声を利用してメロディアスにプレイするのがゴスペル流です。
上記のパターンをさらに発展させると下記のようなプレイも可能なんですよね。
コンテンポラリー・ゴスペルの名曲であるカーク・フランクリンさんの『My Life Is In Your Hands』では、イントロの最後や1番の最後などさまざまな場面で使用されています。
ライブなどで演奏する楽曲のピアノ伴奏をアレンジする場合は、もともとsus4が無くⅠ度のメジャーコードだけの場面でもsus4がある状態にして演奏することも可能です。
装飾音符
ゴスペルをはじめとするブラックミュージックでは、装飾音符を利用してリズムを際立たせることがあります。
特にⅠ度メジャー、Ⅳ度メジャー、Ⅴ度メジャーのコードで使用され、コードの2度の音を3度に向けて引っ掛けるようにしてプレイしましょう。
ただしクラシックの装飾音符とはタイミングが異なるため注意が必要です。
トップノートと装飾音である2度を同時に演奏し、その後でトップノートを残しつつ3度に移っていきます。
楽曲のテンポやグルーヴによって装飾音符は16分音符や3連符、それ以外の音符に変化するので、ニュアンスで弾き分けます。
Ⅵm7であるAm7のようにマイナーコードで使用する場合は、Am7をC/Aと解釈してルートはラを弾きつつ右手でCのコードのように装飾しましょう。
さかいゆうさんの『薔薇とローズ』のイントロでは装飾音符が見事に使用されています。
階段コード進行
ポップスの楽曲でもたまに見かけますが、ベース音が階段状に登っていきコードが変化する進行を僕は「階段コード進行」と呼んでいます。
ゴスペルにおいてはポップスよりも高い頻度で階段コード進行が使用され、もっともオーソドックスなのはⅤ度メジャーからⅥm7、Ⅴ/Ⅶを経由してⅠ度メジャーに向かうパターンです。
よく見られるリズムパターンは下記のようなものがあります。
特にゴスペルではⅥm7のコードがⅣ/Ⅵに変更されている場合も多く、日本でも人気のバラード曲『I’m Available to You』でも使用されているんですよね。
Ⅴ度以外にもⅢ度メジャーから#Ⅳm7b5、Ⅲ7/#Ⅴを経由してⅥm7に向かうパターンや、Ⅵ度メジャーからⅦm7b5、Ⅵ7/#Ⅰを経由してⅡm7へ向かうパターンもあります。
ポップスではAIさんの代表曲である『Story』のBメロの途中で⑧が使用されていますね。(1:02~)
ペダルの使い方
バラードの楽曲を伴奏する場合、多くはサスティンペダルを使用して響き豊かに演奏することが多いと思います。
ゴスペルの場合でもペダルは使用しますが、リズムをより強調するため、バラードでも意図的にペダルを使用せず歯切れ良く演奏することがあるんですよね。
アンドレ・クラウチさんの名曲『Jesus Is The Answer』をCCM(コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック)のアーティストであるマイケル・W・スミスさんがカバーしたバージョンでは、バラード調のピアノ伴奏の中に歯切れのよいリズミカルなアプローチが取り入れられています。
まとめ
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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