今回は僕が一番好きなファンクバンドであるクルセイダーズとランディ・クロフォードの代表曲『Street Life』を取り上げます。
クルセイダーズは僕が音楽の専門学校に通っている時に出会って以来、常に影響を受けてきたアメリカ西海岸を代表するファンクバンドです。キーボードを担当するジョー・サンプルは、僕のアイドル的ピアニストでありキーボーディストなんですよね。
なかでも『Street Life』でのローズ・ピアノのソロは、リリカルで美しいジョー・サンプルのプレイの魅力があふれた名演なんです!
それでは実際のキーボードソロを聴きながら 『Street Life』 の演奏を解釈していきましょう!
もくじ
クルセイダーズ
クルセイダーズ はテキサス州のハイスクールで同級生だった、
- ウェイン・ヘンダーソン (トロンボーン)
- ウィルトン・フェルダー (テナーサックス)
- ジョー・サンプル (キーボード)
- スティックス・フーパー (ドラム)
によって結成されたグループです。結成当時からしばらくは「ジャズ・クルセイダーズ」という名義で活動し、20枚近くのアルバムをリリースしています。
1971年からバンド名を「クルセイダーズ」と改めると名ライブ盤と名高い『Scratch』やギタリストのラリー・カールトンの名演が聴ける『南から来た十字軍』と『旋風に舞う』、ランディ・クロフォードをゲストに迎えた『Street Life』など多くの名盤を残しました。
洗練されているのにどこか懐かしく、ホッとするような温かみのあるサウンドがクルセイダーズの魅力だと僕は思っています。
キーボーディスト「ジョー・サンプル」
クルセイダーズのピアニスト・キーボーディストがジョー・サンプルです。僕は専門学校時代に彼のローズ・ピアノを聴いて衝撃を受けました。
リリカルで透明感のあるピアノと、力強くファンキーなローズ・ピアノの演奏が彼の特徴なんですよね。
クルセイダーズのキーボーディストとしてだけではなくソロアーティストとしても多くの名盤を残していて、1978年リリースの『虹の楽園』と1994年リリースの『Did You Feel That?』が僕のオススメです!
またピアニストとしてだけではなく作曲家としても素晴らしい名曲を数多く残していて、今回ご紹介する『Street Life』も彼の作曲なんですよ。
『Street Life』 について
『Street Life』 は1979年に発売されたクルセイダーズのアルバム 『Street Life』 のタイトル曲として収録されていた名曲です。
アルバム『Street Life』は全米ジャズアルバム・チャートで第1位に輝いた名盤で、シングルとしては全英シングルチャートでは第5位にランクインしたクルセイダーズ最大のヒット曲です。
この楽曲のおかげでクルセイダーズはジャズ・フュージョン好きだけでなく、ポップ・ファンの人気を集めるきっかけにもなりました。
キーボードソロを考察!
それではキーボードソロを解説していきます。
まずはソロを楽譜とともにご覧いただきましょう。
1小節から8小節(0:10~0:27)
冒頭のコード進行は「Fm7|Bbm7|Cm7|Fm7」です。
この部分に登場するコードはすべて曲のKeyである「Fマイナー」に関連するコードであるため、使用できる音としては「Fマイナーペンタトニックスケール」か「Fマイナースケール」の音となっています。(スケールについては調べてみてください)
ジョー・サンプルは「Fマイナーペンタトニックスケール」を基本にしながら、たまに「Fマイナースケール」の解釈で「ソ」の音を混ぜた6音のスケールで演奏していますね。コード進行に関係なく一つのスケールで弾き切るところがファンキーです。
そして注目は7小節目のCm7です。
楽曲の調からは外れるものの本来Ⅲm7である「Cm7」をⅡm7的に解釈し、「Cドリアン」でのフレージングが行われています。(アベイラブルノートスケール参照)
簡単に言うとスケール上にないCm7の♮9thにあたる「レ♮」を使用することで、わざと調から音を外すアウトフレーズのようなアプローチができるということです。
9小節から12小節(0:28~0:36)
続くコード進行は「Fマイナー」の平行調である「Abメジャー」の、「ⅡーⅤ-Ⅰ」や「偽終止」などジャズの知識を少し使用したコード進行ですね。
「Bbm7/Eb」は分数コードに簡略化して表記されていますが、構成音から考えると「Eb7sus4(9)」という少し変わったコードです。
こんな書き方してもパッ演奏できないので、「Bbm7/Eb」のように表記するのが一般的ですね。なのでコードの解釈も「V7」と考えて演奏することになるんです。
ジョー・サンプルは「Bbm7|Bbm7/Eb」ではⅡ-Ⅴとは捉えず、「Fマイナーペンタトニックスケール」に9thの「ソ」を足した6音のスケールの解釈でフレーズを作っています。
次の「Cm7|Fm7」ではEbメジャーペンタトニックのようなフレージングで演奏していますね。フレーズ途中で出てくる「ラ♮」は「ラb」と「シb」をつなぐ経過音とも解釈できるし、Key=Ebのブルーノートである「b5」の音とも解釈できます。
続く「Bbm7|Bbm7/Eb|Abmaj7」でも「ⅡーⅤ-Ⅰ」を意識しないで、「Abmaj7」に対するアプローチであるKey=Abのメジャースケールを使用したフレーズです。
13小節から16節(0:37~0:44)
13&14小節
13小節目から14小節目までは一時的に全音下のKey=Gbに転調しています。
コード進行は転調したKey=Gbの「ⅡーⅤ-Ⅰ」と、Key=Abに戻るためのGm7(b5)で構成されています。
Gm7(b5)はKey=Abにおけるダイアトニックコード7番目であり、Key=GbにおいてはⅡm7であるAbm7に向かうパッシング・ディミニッシュ的用法の「m7(b5)コード」でもあります。
冒頭のフレーズはAbm7の7度・5度・3度の順のアルペジオになっています。その後に続くなめらかで美しいフレーズは、「Gbメジャースケール」のサウンドです。
Gbmaj7ではコードの構成音に含まれている「Bbm」のコード的な解釈でフレーズを構築しています。スケールでいうと「Bbマイナーペンタトニックスケール」です。
そして最後のGm7(b5)はKey=Abに戻るために「Key=Ab(Key=Fm)」の音使いでのソロとなっています。経過音として「ソb」が使用されているものの、他は「Fマイナースケール」で構築されていますね。
15&16小節
15小節から16小節まではKey=Abに戻り、「ⅡーⅤ-Ⅰ」でAbmaj7に着地しています。
最後のC7(#9)は次のセクションにおける頭のコードがFmなので、それに向かうセカンダリードミナントですね。
ソロの内容は平行調である「Fマイナーペンタトニック」に、9thの「ソ」とブルーノートの「シ♮」を加えた7音スケールでの音使いです。
17小節から24小節(0:45~1:01)
17小節目からのコード進行は再び冒頭と同じ「Fm7|Bbm7|Cm7|Fm7」です。
注目すべきは17小節目、21小節目の音使いです。
17小節目3,4拍と21小節目のフレーズは、ファンク系の楽曲ではいたるところで聴くピアノらしい音使いです。ぜひとも手グセにして使ってほしいフレーズですね。
特に21小節目のフレーズは本来「レb」となるところを、ドリアンスケールの解釈で「レ♮」を使用したフレーズです。ファンク系の楽曲ではドリアンスケールでのアプローチは度々行われます。
19小節目と23小節目はどちらも楽曲の調から外れた、コードに対してのアプローチです。先述の7小節目と同じ解釈で、「Cm7」に対してドリアンでのアプローチを試みています。
25小節から28小節(1:02~1:10)
再びBメロのコード進行です。
「Bbm7ーBbm7/Eb」には調のスケール「Fマイナースケール」一発でアプローチしていて、Fmのコードトーンを分散して演奏しています。続くCm7には同じようにCmのコードトーンの分散でアプローチすることで、フレーズ全体のまとまりが増していますね。
30小節目の最後に調から外れた音なのに経過音でもない「ミ♮」があります。これが不思議な音なんですよね。
二つの解釈が考えられると思いますが、一つはわざと外れた音をぶつけるアウトフレーズを狙って「Bbm7/Eb」にb9である「ミ♮」を使うというもの。
もう一つは半拍早くAbmaj7と解釈して、ジャズなどでよく使用される「#5」を含むビバップスケールを使用したというものです。(興味があれば検索してみてください)
とはいうもののどちらも経過音として解決していないので不思議な音使いですが、カッコいいのでよしとしましょう。
29小節目から(1:11~)
29小節目からは一時的な転調が続きます。まずよくある「b3上への転調」でKey=Bへ転調します。同主調平行調転調とも呼ばれています。
その後全音下のKey=Aに転調して、元のKey=Abに戻ってくるという流れです。
Key=B最初の「C#m7ーC#m7/F#」ではコードトーンの跳躍を生かした音使いで、続くBmaj7では「Bメジャースケール」の3度から始まる滑らかなフレーズになっています。
Key=Aではコードトーンだけでなく9thも含めた跳躍フレーズでのアプローチですね。
まとめ
今回はクルセイダーズの「Street Life」のキーボードソロを解説してみました。
ぜひあなたの演奏に活用してください!
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