今回はギタリストであるラリー・カールトンの代表曲「Room335」を取り上げます。
Room335は僕が音楽の専門学校に通っている時に出合った曲で、当時アドリブソロに困った記憶があります。こういう爽やかなフュージョン曲は一見演奏しやすそうに聴こえますが、いざ挑戦してみると意外にそれらしく弾くのが難しい難曲です。
それでは実際のキーボードソロを聴きながら「Room335」の演奏を解釈していきましょう!
もくじ
「Room335」について
「Room335」は1978年に発売されたラリー・カールトンのアルバム「夜の彷徨」の1曲目に収録されていたフュージョンの名曲です。ラリー・カールトンは1971年から1977年にかけて僕が大好きなフュージョン・バンド「クルセイダーズ」に在籍していました。その後「クルセイダーズ」を脱退し、初めて発表したソロアルバムが「夜の彷徨」です。
ブルースとジャズとロックのフィーリングを合わせ持つラリー・カールトンのギタープレイに影響を受けたギタリストは数多いのではないでしょうか。
キーボーディスト「グレッグ・マティソン」
アルバム「夜の彷徨」のキーボードは全曲グレッグ・マティソンです。グレッグ・マティソン・プロジェクトなどでも活躍しているキーボーディストで、再版された「ベイクド・ポテト・スーパー・ライヴ」や現在では入手困難な「ベイクド・ポテト・スーパー・ライヴ2000」などの名盤を残しています。
「Room335」の曲中ではRHODES PIANOによるソロを聴くことが出来ます。
キーボードソロを考察!
それではキーボードソロを解説していきます。
まずはソロを楽譜とともにご覧いただきましょう。
1小節から8小節(0:08~0:23)
冒頭のコード進行は「Dmaj7-A2/C#|Bm7-C#m7|Dmaj7-A2/C#|Bm7-Amaj7-Eb9(b5)」です。
この部分に登場するコードは大半が曲のKeyである「A」のダイアトニックコードであるため、使用できる音としては「Aメジャースケール」の音となっています。(例外としてEb9(b5)は次のDmaj7に向かうSec.Dの裏コードです。)
グレッグ・マティソンはこの部分を「Aメジャーペンタトニックスケール」を基本にしながら演奏しています。「ファ♯」から「ラ」への音の跳躍がペンタトニックスケールの特徴を表しています。4小節目の「シ」⇒「シb」⇒「ラ」は「シb」が経過音として「シ」と「ラ」をつないでいます。
9小節から16小節(0:23~0:36)
最初に引き続き同じコード進行です。
「Aメジャーペンタトニックスケール」を基本にしながらの演奏ですが、前半よりも16分ビートを意識して休符を効かせたリズムになっています。
15小節から16小節はブルーノートである「ミb(レ♯)」を使用したブルージーなフレーズになっています。ブルースなどでもよく使用される常套フレーズですので覚えておくといいと思います。16小節最後の1拍は17小節目からの転調した調に一足早く合わせて演奏されています。
17小節から26小節(0:37~0:54)
17小節から20小節
17小節から20小節までは一時的にKey=Cに転調していて、最後のD/EがKey=Aに戻るための導入のコードになっています。
転調したKey=Cの「Cメジャーペンタトニックスケール」を使用していると捉えてもいいですが、Cメジャーの並行調である「Aマイナーペンタトニックスケール」を使用していると解釈するのがおすすめです。それによって「Aメジャー」から「Aマイナー」へ同主調に転調していると捉えることが出来ます。
演奏法の特徴としてはKey=Amとみた場合のb7度である「ソ」やb3度である「ド」を、フレーズのトップノート(一番上の音)として演奏していてピアノらしいフレージングになっています。
21小節から26小節
21小節から26小節まではKey=Aに戻りつつ、サビのKey=Dに向けての転調の準備です。
最初の3小節はソロ冒頭の「Aメジャーペンタトニックスケール」を基調に経過音やブルーノートを用いたアプローチとほぼ同じです。
24小節目はKey=Cに転調して「Cメジャーペンタトニックスケール」のフレーズ、25小節&26小節はサビに向けて先行してKey=Dに転調し「Dメジャーペンタトニックスケール」のフレーズになっています。同じ音域で似たフレーズをたたみ掛けることで、サビに向けた高揚感が表現されています。
27小節から34小節(0:55~1:09)
サビである27小節目からはジャズ理論を用いたコード進行が使用されています。
Bm7に向かうSec.DのF#7や、Gmaj7に向かうセカンダリーⅡ-ⅤのAm7-D7などが見受けられます。33小節目が一時的にKey=Eに転調しているのも特徴的です。
27小節から29小節までは「ミ」と「ファ♯」で構築されたフレーズに、トップノートにコードごとの構成音を選んで使用しています。30小節目のⅡ-ⅤはAm7の構成音を演奏したあとD7に対するフレーズを演奏したと捉えるより、次のGmaj7に向かうための経過コードとして半音上のフレーズを演奏したという感覚の方がしっくりくると思います。
31小節目は16ビートの上で3連符を使用する特長的なフレーズで、32小節目のB7(b13)では「#9」の音を利用した6連符のフレーズを演奏しています。結果として「ソ・シ・レ」を使用しているので「G」のコードを分散したようなフレーズとなっています。
32小節目の第一音はEmaj7のmaj7にあたる「レ♯」を使用していて、4拍目は33小節頭のGm7に向けたフレーズを先取りで演奏しています。
33小節のGm7-C7はKey=FのⅡ-Ⅴと捉えて「Fメジャースケール」もしくは「GドリアンとCミクソ・リディアン」を使用します。個人的には「Fメジャースケール」の方がテンポも速いので演奏しやすいと思います。最後の「C#7」はコード進行上の経過コードなのでソロのフレージングとしては無視して構いません。
35小節から41小節(1:10~)
基本的にサビの前半と同じ解釈ですが、Key=Eに転調せずに終わります。
ソロのフレーズはKeyである「Dメジャースケール」を基本として、「Dメジャーペンタトニックスケール」も使用しています。
38小節目のAm7-D7ではⅡ-Ⅴを意識せず「Dメジャーペンタトニックスケール」のフレーズを演奏しています。40小節目のF#m7ではルートを除いた3音の「Aトライアド」が感じられるフレージングで、ノンダイアトニックコードであるB7の部分でも「Dメジャーペンタトニックスケール」を活かし結果的にB7(#9)らしいフレーズになっています。
まとめ
今回はラリー・カールトンの「Room335」のキーボードソロを解説してみました。
濱田卓也ピアノ・キーボード教室ではフュージョンやファンクなどの音楽に対する、キーボードのアプローチもレッスンしています。
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